ひとかけらの石

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  ……そして今朝、今度は土より固い石の上で寝ていた。 辺りを見渡すと石造りの建物で、いかにも「牢屋」と云った感じの大きな鉄格子がはめてある、出口はそこにしか無い。 薄暗い部屋に薄暗いろうそくが灯っている。 はっと気がついてポケットを探る。あの石がちゃっかり入っていた事に安心する。 誰もいない、見たところ牢屋で間違いないが看守の姿が無い。 謎が増えた……が、当初の目的である屋根は見つけた。 座って目をつぶる、まずは場所。 日本では無い、地震大国日本に石造りの建物は少ない、しかも牢屋となると全く無いと言っても過言では無いはずだ。 ではどこ? そもそもなぜ牢屋に? 鉄格子に張り付いて扉を調べてみる。南京錠が二つ、周囲に鍵は見当たらない、脱獄は無理だ。 「おーい! 誰かー!」 鉄格子に張り付いたついでに叫ぶ、ついでに鉄格子の外を見る。 看守が座るであろう椅子、閑散とした机。その先にある窓からは豪雨の様子が伺え、たまにピカッと稲光が走る。 さらに左に行くと木製の扉がある。あそこに向けて声を飛ばせば誰かに聞こえるかもしれない。 「おーい!」 早速僕の声が届いたのか、キィ……と少し軋んで扉が開いた。  
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