三バカ怪盗団、結成!

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どんよりとした雲が月の光すらも覆い隠す、そんな真っ暗闇の夜のこと。 森の中にそびえ立つ、古びた教会の中で、三人の男女が酒をかっくらいながら、大きな声で何やらわめき散らしていた。 「ああーっ! 畜生! あいつらのせいで、俺のスリ軍団は壊滅したんだ! 絶対に許さねえ!」 「ああ、全くだね。僕の美しい顔に傷をつけるなんて、どう考えても許されることではない。これは全世界の損失だよ。ああ、だが傷を受けてもなお美しい僕は、その存在自体が罪なのかも知れない!」 「うるさいよあんたたち! いつまでもくっちゃべってないで、少しは手伝いな!」 ここにいない誰かに向かって、怒鳴り散らす男二人と、それを諫める女一人。 今でこそ、こんな所で落ちぶれている三人だが、少し前までは、いずれも裏社会では名の知れた存在であった。 「仕方ねえだろ! このくらいじゃ俺の怒りは治まらねえんだからよ!」 ずんぐりと太った身体を汚らしいジャケットで包んでいるこの男の名は、ライネル・ホットウェル。 かつては巨大なスリ軍団の首領として君臨していた男であった。 「ああ失礼。家事は本来僕の仕事だと言うのに……。この皿は僕が片付けよう。君の美しい手を汚すわけにはいかないから……」 よく手入れされた髪をかきあげつつ、無駄に回転を加えた動きで女から皿をひったくるこの男の名は、アラス・ドロム。 かつて多くの女から金をだまし取り、ヒモ男爵と呼ばれて恐れられていた男である。
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