第九章

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…それは、過去の記憶。 孤児院で共に育った兄妹同然の彼女と別れる日。 孤児院の裏にある野原の大きな木の下。 そこに座って遊ぶ、なにも知らない彼女に、別れの印にシロツメグサの冠を被せた。 無邪気に笑う彼女は本当に愛しくて。 『…姫だな』 それが彼女との別れの言葉。 そこで彼女とは離ればなれ。 その時は、自分に力がなくて、守ることもできなくて。 小さな手を離さざるおえなかったけど。 今は違う。 「守ってみせるさ」 じっと暗闇の道を走らせながら、ジェイは自分に言い聞かせるように呟いた。
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