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目が慣れてきたのか、ぼんやりと家の中が見えるようになってきた。
窓から差す淡い月明かりも手伝って、電気を点けないままでも十分に歩けるほどだ。
途中、月明かりの届かない真っ暗なキッチンをササッと通り抜け、洗面台の鏡を見ないようにトイレに駆け込んだ。
やはり住み慣れた家でも怖いものは怖い。
トイレの電球の明かりが、暗闇に慣れた目にやけにまぶしかった。
用を足し、洗面台の鏡を見ないように手を洗い、また寝室に戻る。
明るさに慣れたせいであまりはっきりとは見えないが、戻る分には問題ない。
外からはかすかに虫の鳴き声が聞こえていた。
そしてキッチン。
さっきみたいにササッと通り抜ければ良かったのだが、視界の端に何かを捉え、足を止めてしまった。
キッチンの暗闇の中に何かある。
空中に何か白いモノが浮かんでいる。
…なんだろう?
やっと慣れてきた目を凝らして見てみると……
唐突に腕を掴まれた。
そこで気を失った。
翌朝。
朝日がまぶしい。
いつも通り布団の中で目を覚ました。
汗でびっしょりになっている。
夢か……
ほっとして、はだけた寝間着を直しながら掴まれた腕を見て鳥肌が立った。
そこには赤い文字で「ハッピーセット」と書かれ、枕元には
ハッピーセットが置いてあった。
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