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※
『―…という訳だ。予定通りなら四日後に、〈スヴァイン〉はイズ基地に納入される予定だ。
そちら側でも準備をしておくのだぞ』
「アイ・サー。確かに了承しました」
少々ノイズが混じった映像に向けて、彼女はゆるく返事をした。
会話相手を『サー』と仰々しい呼び方をする割には、やけに気の抜けた声だ。
『だが気をつけろ。AAランクの機密とはいえ、万全とはいえん。当日は警戒体制を2ランクは上げておけ』
「分かってますって、おじさま。当日は駐留のスクランブル要員に加えて、ウチから〈ファルク〉を一機回しておきます。これならよっぽどの事があっても大丈夫でしょう?」
『念には念を入れるに越した事は無い。アレにはそれだけの価値がある。…それから―』
「それから?」
『秘話通信とはいえ、「おじさま」は止めろと何回も言っただろう。―交信終了』
そう言い残して、モニターの映像がプツッと切れた。
「…ハハッ。相変わらず真面目だなぁ…でも今日はちょっとピリピリしてたかな?」
そう呟いて彼女は椅子の背もたれによっ掛かり、薄暗い部屋の天井を見上げた。
確かに大変なのは、これからだ。
なにせ今度こちらに来る物は、ある意味パンドラの箱より厄介な代物だ。
世界を明るく照らす希望にも、それすら塗り潰す絶望に変わる可能性すら内包したガジェット。
そんな形容がピッタリのマシーンが四日後、この場所に来るのだ。
「ふふっ。大波乱の幕開けになるのかしらね…これは?」
薄く微笑みながら、彼女は虚空に向けて呟いた。
全ては四日後。
そこから始まるのだ
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