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―残り時間はあと320秒。
決して後ろを振り返らず、走り続けた彼女は目標地点の施設に到着した。
元はとある技術研究の為の施設であった建物の外観は、今はそこら中が穴だらけのボロボロの状態だった。
恐らく敵側による長距離砲撃や、小規模の爆撃による被害であろう。
余程、あちら側にとっては『逃避』は断固として阻止したいモノなのだろう。
(地上の『ゲート』は使えなさそうね。
なら地下にあるヤツで!)
彼女は施設の敷地内に入ると、すぐさま周りを見渡し、ある一本の木を見付けると足早に駆け付けた。
その木は正確にいえば『樹木』では無かった。
表面上を木に偽装した、この施設の地下への『鍵』の一つであった。
「狙い所は良かったけど…ツメが甘かったのよね、これが」
木の周りを見回し、普通の木との相違点―電卓状のコンソール―を見付ける。
機体の遠隔通信でパスコードを入力すると、地面がスライドして地下への入口が開いた。
それは滑り台の様な斜面に沿って設置されたエレベーターであった。
本来なら荷台に乗って降りるところだが、彼女にはその時間すら惜しい状況であった。
「‥うりゃ…あぁぁぁ~…!!」
彼女は、『斜面をそのまま滑り落ちる』という移動方法を選択した。
騒音と大量の火花を散らして、鋼の躯体は猛スピードで地下に降って行った。
そして、危ない手段を取った甲斐もあり、僅か数十秒という驚異的な速さで彼女は地下エリアにたどり着いた。
―急がねばならない。残り時間はあと40秒を切っている。
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