第1話 『落ちてきた機体(アイツ)』

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六月が半ばを過ぎ、梅雨の季節も終ると気温は急上昇したように思える。 本日は快晴なり。予報によれば最高気温は、今年度初の30℃越えを果たすらしい。 「…暑い……」 先程から何回同じセリフを呟いたのだろう。 頭頂から湯気が出そうな程の熱気が充満する教室の中、少年は机に顔を突っ伏していた。 始業前の朝でこれ程なのだから、昼にはどれだけ暑くなるのだろう―考えるのもイヤになってきた。 「やっほ~、かざみん。暑いなー今日は」 そんな少年の元に、定刻通り―始業ギリギリ―の朝の挨拶が聴こえた。 その声に応える様に、伏せていた顔面を持ち上げた。 黒みがちな藍色のサラサラした髪をショートヘアの中性的な―というより、女性寄りの綺麗な顔立ちの少年だ。 『かざみん』と呼ばれた事が深いなようで、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに返事をした。 「人の事を勝手に、紫ツインテールの女の子みたいな呼び方で呼ぶんじゃねぇ」 「良いじゃん。レンは可愛い顔してんだし」 「暑いんだから余計な世話すんな、ウザい。毛ぇ毟るぞ」 「何処の?」 「全部」 「わぉ!そりゃ恐ろしい!」 挨拶をした方の少年がからからと笑う。 フワフワ癖っ毛の茶髪で、小学生をそのまま大きくしたような少年だ。 眩しい笑顔のおかげで、教室にもうひとつ太陽が降りてきたように思えるくらいだ。 女顔の少年の名は、風見蓮(カザミ レン)。 笑顔の少年の名は、来琉間始(クルマ ハジメ)。 今年で高校二年生になる、ごく普通の少年達であった。
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