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六月が半ばを過ぎ、梅雨の季節も終ると気温は急上昇したように思える。
本日は快晴なり。予報によれば最高気温は、今年度初の30℃越えを果たすらしい。
「…暑い……」
先程から何回同じセリフを呟いたのだろう。
頭頂から湯気が出そうな程の熱気が充満する教室の中、少年は机に顔を突っ伏していた。
始業前の朝でこれ程なのだから、昼にはどれだけ暑くなるのだろう―考えるのもイヤになってきた。
「やっほ~、かざみん。暑いなー今日は」
そんな少年の元に、定刻通り―始業ギリギリ―の朝の挨拶が聴こえた。
その声に応える様に、伏せていた顔面を持ち上げた。
黒みがちな藍色のサラサラした髪をショートヘアの中性的な―というより、女性寄りの綺麗な顔立ちの少年だ。
『かざみん』と呼ばれた事が深いなようで、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに返事をした。
「人の事を勝手に、紫ツインテールの女の子みたいな呼び方で呼ぶんじゃねぇ」
「良いじゃん。レンは可愛い顔してんだし」
「暑いんだから余計な世話すんな、ウザい。毛ぇ毟るぞ」
「何処の?」
「全部」
「わぉ!そりゃ恐ろしい!」
挨拶をした方の少年がからからと笑う。
フワフワ癖っ毛の茶髪で、小学生をそのまま大きくしたような少年だ。
眩しい笑顔のおかげで、教室にもうひとつ太陽が降りてきたように思えるくらいだ。
女顔の少年の名は、風見蓮(カザミ レン)。
笑顔の少年の名は、来琉間始(クルマ ハジメ)。
今年で高校二年生になる、ごく普通の少年達であった。
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