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―キーン コーン カーン コーン…
お天道様が南中に位置する時間帯、午前の授業が全て終わった事を告げるチャイムが鳴り響いた。
「あ~暑っ。弁当痛んでないかな?」
昼休みになると、決まって始は蓮の席に寄って来る。
昼食には、始は弁当を手持ちし、蓮はコンビニか購買で購入した物を食べる。
意識している訳では無いが、二人の昼食はいつもこんな感じだ。
「気をつけろよ。お前が腹壊したら色々困る」
「おっ、嬉しい事言ってくれるじゃないの」
「お前が休んだら、授業の解らない所の補習が出来なくなる」
「ひでぇ。俺の体への心配は~?」
「お前がその程度で参るタマかよ?」
『そだね』と返事をし、カマボコ口で『ワハハ』と笑う始。
このように二人の会話内容には、蓮がよく会話の節々に毒舌じみた軽口を入れて来るが、始はそれを特に気にする事無いで、笑って済ましている。
なんというか始は―余程の大物なのか、ただの能天気者なのか解りづらい人間であった。
「…あ、そいやさレン」
「ん?はんふぁ?」
始が突然思いだしたかのように切り出した話題を、蓮はあんパンにかぶりつきながら聞きはじめた。
「こないだ野暮用で、牧之原まで行ったんだけどよ」
「んふ~…(随分と遠出で…)」
「そこにさ、レンが好きそうなAFの本が沢山有る古本屋を見付けたんよ」
「むぐっ!?」
蓮は驚いた拍子に、あんパンの欠片が食道では無く、気管の方に飲み込みかけてしまった。
苦しそうに胸を叩きながら、お茶の力を借りてパンを飲み込み、話を再開した。
「…それマジ?」
「マジのマジンガーよ。
だからさ、今度お互い暇な時に案内してあげようかと思って―」
そこで始の話は止まった。
いや、止められた。
始の手をガッシリと掴み、今日一番の爽やかさが篭った蓮の笑顔に。
「ありがとう、心の友よ」
「…現金な奴だよ、レンちんは」
「ははっ、電子レンジで調理したみたいにいうなよマイフレンド」
ツッコミでさえ無駄に爽やかであった。
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