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「ただいま。」
静まり返る部屋に向け、そう言ってしまうのは寂しさからだろうか。
私は2年前から、ここに一人で住んでいる。
勿論返事は返ってこないのだから
余計寂しくなるだけなのに。
いつもの場所からタオルを出して、髪を拭きながらソファへ腰をおろす。
~♪
静かな部屋に響き渡る着信音。
可愛いげもない、設定曲は着信音1。
一定の音程を刻むソレに手をのばす。
「ああ、ゆっこか。」
友達からの電話に、少し嬉しくなる。
やっぱり私は寂しいのだ。
「はい、もしもし」
『楓?今何してるー?』
「別に何も。」
『呑み来なよ。いつもの店にいるからさ。』
「…分かった。」
『んじゃ待ってるね。』
「うん。」
電話が切れた時の音は、私の寂しさを倍増させた。
「早く行こう。」
濡れてしまった服を脱ぎ、適当に出した服に着替えた。そして、軽く髪をとかし
傘とお財布と携帯を手に持ち、外へと出た。
まだ、雨は降り続いている。
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