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「いらっしゃいませー。」 「楓ー。」 店内に入ると店員さんの声も掻き消すような 大きな声でゆっこに呼ばれた。 「これおいしそう!買ってこ!」 コンビニなんてよく来る場所なのに 何故かゆっこのテンションは高い。 …あぁ酔っ払いだからか。 小さく、ため息をつく。 「楓疲れた?」 さっきまでお菓子に夢中だったゆっこが 私の目の前に立ち、心配そうに顔を覗きこんでいた。 「ん?大丈夫だよ。」 そう言って、笑顔を向ける。 それでもゆっこの顔は暗いままで 「…ごめんね?」 なんて言われてしまった。 「え?何が?」 「いや…うん。」 何とも歯切れの悪い答え。 「ゆっこ?」 俯くゆっこに思わず声をかける。 「…楓、これ買ってこ!!! あと、これとこれとコレ!」 下手くそな話題転換。 きっとゆっこは、 私を元気づけようとしてくれてるんだと なんとなくだけど思った。 「ゆっこ、ありがとう。」 聞こえるか聞こえないか微妙なくらい、小さな小さな声で呟いた。 ハッキリと改めて言うのは恥ずかしい。 酔っ払いなうえに、色んな商品を手にとってハシャいでいるから 気づかないと思ったのに、ゆっこは小さく微笑んだ。
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