一話

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休み時間中の教室にはまだ担任の教師がいたが、後藤先生に呼び出されていたと言う事実を武器に訳を話し、何事も無かったかのように着席した。 「さーて、いただきまーす」 着席した俺は早速、冬子が持ってきてくれた弁当箱を開けた。 「ほぉ、なかなか美味しそうなお弁当ですね」 すぐ前の席に座っているのは佐賀。席順は出席番号順である為、『佐賀』の次に、俺の苗字の『四季野』がくる訳だ。 「む!やらんぞ」 「あげる、あげないかは冬夜の自由ですが、先ほど、後藤先生から救ってあげた恩を忘れた訳ではありませんよね?」 「その笑顔でそう言われると、あげないといけないみたいじゃねぇか」 「そこの飾りのミニトマトで結構ですよ?」 「…しょうがないな、ほらよ、戦利品」 「有り難く頂戴致します」 そう言って、佐賀は戦利品のミニトマトを口に放り込んだ。 俺も早速、卵焼きを口に運んだ。 「…あぁ…………美味い…」 今さらながら、朝の食卓の内に、温かいまま食べたかったと後悔した。 。
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