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――その日は雲一つ無い快晴だった。何かと記念を作りたがる父が、冬子が中学生になった記念にと言い、俺と冬子と両親は、久しぶりに家族皆で出かけることにした。
父親の車に乗ってドライブ。適当に走り、適当な場所で休憩し、適当な時間に帰る。という、自由気ままなドライブだった。
そして、その適当な時間帯での帰り道に―――
猛スピードで信号無視をしてきた大型トラックと、俺たちが乗っていた小型自動車が衝突した。……運転手の居眠りだったそうだ。
大型トラックが乗り上げた小型の車体は、ほぼ完全に潰さていた。
後部座席に乗っていた俺と冬子は、奇跡的に一命を取り止めた。
俺の怪我は酷いものであったが、幸いなことに、冬子にはほとんど傷は無かった。……しかし、冬子は俺の怪我を見て、精神的には俺よりダメージを受けていた。
鳴り響くサイレンと人混み。
救助させるまでの時間、全身を裂くような激痛に耐えながら、俺は冬子を安心させる為に、その潰れた車内で手を繋ぎ、会話をしていた。
『…っ…お兄ちゃん…血が…、血が…こんなに……』
『…大丈夫だよ…、このくらい平気だから……泣くなよ…』
…そんな…会話を。
。
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