一話

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「ああー、暇だな…」 四限目が終わるまで、俺はこの廊下で暇を潰さなければならない。……両手に水いっぱいのバケツを持ちながら。 「……って、バケツかよ…」 こりゃ本格的に昭和だな。…ああ、もう腕が痛い…。 …いやーそれにしても…何やら嫌な夢見ちまったな…。 さっきの夢。 俺が過去に体験した、恐ろしい悪夢。 うーむ、あぁ正確に再現されると、嫌でも思い出してしまう。 『……お兄ちゃん…』 ……あれ、そういや…。 あの事故での入院生活以降、冬子が急に俺のことを「お兄ちゃん」ではなく、「兄さん」と呼ぶようになった。 さらに、突然敬語を使うようになった。 困惑してはいたが、その時はあまり変には思わなかったからそのままスルーしてたけど…、今思い出してみると…かなりの謎である。 …はて? 腕の痛みも忘れて、そんな事を考えていたその時。急に外が騒がしくなった。 その廊下の窓から下を覗き込んで見ると、多数の生徒達が下校しているのが見えた。 ……あぁ、新入生は三限で終わりなのか…。 下校していく生徒を羨ましく見ていた。 …そういや俺らも四限で終わりだったっけ。 。
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