1160人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああー、暇だな…」
四限目が終わるまで、俺はこの廊下で暇を潰さなければならない。……両手に水いっぱいのバケツを持ちながら。
「……って、バケツかよ…」
こりゃ本格的に昭和だな。…ああ、もう腕が痛い…。
…いやーそれにしても…何やら嫌な夢見ちまったな…。
さっきの夢。
俺が過去に体験した、恐ろしい悪夢。
うーむ、あぁ正確に再現されると、嫌でも思い出してしまう。
『……お兄ちゃん…』
……あれ、そういや…。
あの事故での入院生活以降、冬子が急に俺のことを「お兄ちゃん」ではなく、「兄さん」と呼ぶようになった。
さらに、突然敬語を使うようになった。
困惑してはいたが、その時はあまり変には思わなかったからそのままスルーしてたけど…、今思い出してみると…かなりの謎である。
…はて?
腕の痛みも忘れて、そんな事を考えていたその時。急に外が騒がしくなった。
その廊下の窓から下を覗き込んで見ると、多数の生徒達が下校しているのが見えた。
……あぁ、新入生は三限で終わりなのか…。
下校していく生徒を羨ましく見ていた。
…そういや俺らも四限で終わりだったっけ。
。
最初のコメントを投稿しよう!