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『ぐきゅるるるるー…』
直後、何やら奇妙な音が鳴る。…そうだ、俺は今日、朝食を食べないで登校したんだった。
思い出した途端、急に腹の虫が空腹感を訴えてきた。
「おやおや、この騒ぎの中でも、冬夜の腹の虫の声はなかなか響くものですね」
「は、はは…」
まぁ、それは近くにいる佐賀と妹にしか聴こえていなかったらしいが。
「済まぬ腹の虫よ…、お前の空腹感を満たしてやれず…」
と、腹をさすりながら呟く。
「ふぅ、全くもう、仕方ないですね兄さんは」
冬子はそう言うと、自分の鞄からなにやら布に包まれた物を取り出して、俺に差し出した。
「はい」
可愛らしいナプキンに包まれた物。俺はそれを受け取り。
「これは?」
「兄さんの朝食をお弁当にして持ってきたんです。駄目ですよ?朝食はきちんと取らないと」
「…………」
次の瞬間、俺は冬子を抱き締めていた。
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