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そして、僕も靴を脱ぎ、お姉さんの後ろに付いて、左側の部屋の中へ入っていった。
「お、おじゃましまぁ、す……」
と、そこで僕が見たものは、部屋一面に平積みされた、大小様々な、大量の本の山だった。
「“ちょっと”散らかっているけど、適当に、空いている所に座ってて。今、お茶でも淹れてくるからさ?」
僕の背中を押し、部屋の中へ押し込みながら、お姉さんがそう言った瞬間……
僕の横を、一陣の風が通り抜けた。
「っうわ!?な、何が……」
「ユリヤお姉さまに、その様な事はさせられませんっ!お茶は、僕が淹れて来ますので、お姉さまはどうぞ、座っていてくださいっ!」
その、風の正体は……緑色のジャケットを着て、ネクタイまで締め、メガネをかけた、線の細い青年だった。
だけど……その声は、どう聞いても、先ほど、ドア越しに聞いた女性の声な訳で……。
混乱している僕の後ろで、ユリヤお姉さまと呼ばれた女性が答えた。
「あぁ~、悪いわね。それじゃあよろしく、ね?ミレイ」
……どうやら、僕が青年だと思っていたのは、男装の麗人だった、らしい。
……でも、初対面で自分の事を“僕”って言ったら普通、男の人って思っても、無理はない、よね?
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