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ユリヤさんと一緒に、本をどかして空けたスペースに、二人並んで腰を下ろしていると……
ドアを片手で開けながら、残る片手で、お盆の上に湯気の立つカップを載せたミレイさんが、頬を膨らませながら入って来た。
「……まったく、ユリヤお姉さまは、困った人を見ると、助けずにはいられないのですから……
まぁ?そこが、お姉さまの良い所でもあるんですけれど、ね……?
ほどほどにしませんと、その内、里親を探さないといけなくなりますよ?」
……僕は、ミレイさんにとっては犬猫と同レベル、ですか?
ま、まぁ。僕の場合は、実家へ帰れば済むだけの話なんだけど、ね。
と、そんな事を考えていると、ユリヤさんが、ミレイさんの持っているお盆に手を伸ばして……
二つのカップを持ち、その一つを僕へ差し出しながら、可愛らしく小首をかしげる。
「はい。え、えっと……そう言えば名前、聞いてなかったね?何さんって言うのかな?」
その言葉を聞いてミレイさんが、あきれ顔で、ため息混じりにつぶやいた。
「……そんなの、ポチかタマで十分ですよ」
「……瀬櫛井 圭です。出来れば、その、フルネームでは呼ば……」
「ねぇねぇっ!聞いた?聞いたっ!?“セクシィ系”だって!あはははっ!面白ぉ~いっ♪」
「……で、出来れば、そう呼ばな……」
「ふふ……♪セクシィ系……ふふ、うふふふ♪」
僕が、フルネームで呼ばない様に言おうとするのをさえぎり、ユリヤさんはお腹を抱えながら苦しそうに床を叩いて……
ミレイさんは、お盆を持ったまま、残った手の甲を口元に当てながら、上品に、クスクスと笑っていた。
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