思い立ったが、吉田引く1

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   交番で確認してもらった結果、その辺りには、それらしきアパートは二つある、との事だった。    そのうち一箇所は、大家さんと連絡が取れず、もう一箇所には、連絡は取れたものの、僕のお袋の事を知らないばかりかか……    満室で、入居の予定すらないとの事だった。     「では、その連絡が取れない方をあたって見ます。……どうも、ありがとうございました」    僕は、お巡りさんにお礼を言うと、交番を後にして、新しく書き直してもらった地図を頼りに……    大家さんと連絡が取れないと言うアパートへ向かって、歩き始めた。    その道すがら、サイレンを鳴らした消防車が、僕の横を通り過ぎる。     「おぉ、こっちでは消防車も大きいんだなぁ。でも、火事かぁ……怖いよねぇ。大事なものが、一瞬で消えてしまうんだから。     僕も、これからは一人暮らしになるんだから、火の元には気をつけないと……」    そう、つぶやきながら歩く僕の横を、もう一台、別の消防車が通っていった。
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