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そして、やっとの思いでたどり着いた、おそらくは目的地ではないかと思われるアパートは、僕の目の前で、激しい炎に包まれていた。
「そ、そんな……」
まさか、消防車の目的地と、僕の行こうとしている所が同じだったなんて……想像も、していなかった。
周囲は、その火事を遠巻きに眺める野次馬や、それを現場へ入れない様にする、消防服を着た人などで、ごった返している。
「ほ、他にアパートは無いのかな?も、もしかしたら、僕が探しているのは、そっちなのかもしれないし……」
僕は、近くにいる人に、恐る恐る訊ねてみた。
だけど、この辺りは一軒家ばかりで、アパートと言ったら、ここと、もう一つだけだと言う。
その、もう一つと言うのは……さっきの、連絡は取れたけど、僕の事など知らないと言われた場所、だった。
「ど、どうしよう。だいたい、ここかどうかも確認が取れていないって言うのに、肝心の場所が燃えているんじゃ……」
僕は、燃え盛る炎と、それに向かって伸びてゆく、消防車の放水の軌道を、ぼんやりと見つめながらつぶやいた。
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