過去の序章に過ぎず。

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 眼鏡の青年は、椅子に深く腰掛け、何か思い詰めた表情でじっと床を見つめていた。  ふと、右手薬指に嵌めた指輪に指が伸びていた。触れる。  また暫くして、ネクタイを外し、スーツを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンに手を掛ける寸前手が止まった。  ブラウスから見える体に巻かれた包帯。 「・・・くっ」  歯を噛み締めると、徐にブラウスを脱ぐと、体に巻かれた包帯をがむしゃらにはぎ捨てた。  姿見に映った今の自分に気付き、自分から目を反らした。  金髪の女性は、ソファーに深く腰を落とし、足を組んで、天井を見上げていた。  目を閉じて、深く息を吐く。  無意識に左腕に彫られたタトューに爪を立てて、掴んでいた。  筋肉質な青年は、ベッドへ背中からダイブした。余韻で体が上下する。  羽織っていたジャケットを投げ捨て、下に着ていたタンクトップになる。彼もまた身体に包帯を巻かれていた。  しかし、眼鏡の青年とは、違う場所に巻かれている。彼もタンクトップをずらし、包帯をはぎ捨てた。  三人がこうして集まる        前に起きた三人の過去。  明日の腕試し中に明らかになる。  
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