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寒さに震えながら、目を覚ますと、外は土砂降りの雨が降っていた。
すでに起きていたエスタニアが窓から外を見つめている。ローエルは彼女の隣に立つ。
「エスタニア?」
「お兄ちゃん、どうして雨は降るのかな?」
「え・・・」
答えにローエルは戸惑う。
「・・・生きてるからかなぁ?」
なんて言ってみる。
エスタニアからの返答はなく、ローエルは困った。
「ほら、寒いから奥へ行こう」
エスタニアの腕を掴むと、皆の所へ連れて行った。
この地域は雨が降ると、グンと気温が下がる。晴れた日などはとても暖かい。気温の激しさに慣れていない彼らは、服も薄着で益々寒い。
皆はくっついて寒さを凌ぐ。
「寒いよ…」
「すぐに止むさ…」
お互いを褒め合うことしかできない。
寒さで手がかじんで料理さえ出来ない。
「お腹空いた…」
「くだものでも食ってろ」
太陽の光でいつも明るいこの家屋も雨による曇天によって光さえ入ってこない。
真っ暗に近い家屋の中では、誰が喋っているのかすらも分からない。人の温もりしか感じることが出来ない。
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