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夜。
また、丘からあの歌声が聴こえてきた。
ローエルは待ってましたとばかりに楽譜を持って、丘へと向かった。
彼女は居た。しかし、弟の姿は無かった。
「おい月!楽譜、楽譜見つけたぞ!!」
肩で息を整えながら彼女の前に立ったローエルは、楽譜を見せつけた。
「ありがとう…」
ローエルは彼女の言葉に笑顔になり、顔を上げた。
「!?」
月は泣いていた。涙を淡々と流し、目の周りは真っ赤に腫れていた。
それを見たローエルは、戸惑う。
「お、おい。どーしたんだよ!?」
「…海が、唯入院しただけだ」
「唯、じゃねえよ!?大丈夫なのかよ!?」
「大丈夫。海は身体が弱くて、ちょっと無理しただけだから」
涙を拭う。
ローエルは唯唯何も出来ず、彼女を見つめていた。
「っ…そうだ。楽譜を盗ってこれる事が出来たのだから、お前を良い場所に連れていってやる」
そう涙が落ちついた頃に、月が言ってきたのだ。
「い、今から!?」
「ああ。夜でないと私が連れていけない」
彼女が芸能人だということに気付く。
今は、午後8時すぎだ。
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