魔性の女

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ここは昨日も来ていたファミレス。 これから慶と晃くんが“奴”と言っていた人物に会う。 と言っても、あたしも“奴”とは顔見知りだ。 でもその前に、一言言いたい。 「晃くん、あっち側行ってよ」 何が楽しくて2人掛けのソファーに3人で座らなきゃいけないんだ。 「意地悪!」 晃くんは口を尖らせながら、おとなしく言われた通りにした。 普通4人掛けのソファーには2対2で座るよね? 晃くんはコリン星を越えそうだ。 「お待たせぇ~」 甘ったるい声が聞こえた。 同時に香る、これまた甘い香水の匂い。 「待ってたよ、蘭ちゃん」 慶が嬉しそうに拍手した。 間違いなく拍手はいらない。 中越蘭。 あたしたちと同じ18歳。 胸まである髪を緩く巻き、うるうるした瞳とテカテカした唇。 テーブルに乗せることのできる豊満なバストに、それに不釣り合いなスマートな体型。 見た目、 パーフェクトボディ(ケインコスギ風)。 「晃くん会いたかったぁ」 何とも色っぽい視線を晃くんに送る蘭。 晃くんは茹であがったばかりのタコのように、顔を真っ赤にしている。 そう。 蘭の武器は容姿だけではないのだ。 巧みな話術でオトコを弄ぶ、通称“魔性の女”。 やけに普通の呼び名だね。 .
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