595人が本棚に入れています
本棚に追加
あの後のことを簡単に説明しよう。
病院に連れていかれた蘭は、わかりきっているけど異常はなかった。
それでもずっと謝り続けている太志に、ひとつだけお願いをした。
「それで家庭教師!?」
すっとんきょうな声が出てしまった。
蘭と家庭教師
うーん。何だかいまいち結びつかないな。
でも太志と会う理由としては、ちょうど良いような気がする。
「さすがだよ、蘭ちゃん。やっぱり頼りになるね」
嬉しそうに慶が笑う。
「まだまだこれからだよ。何とかしてお姉さんとダルマの関係を壊してやる!」
いやいや。
そんな計画ではないだろ。
「がんばれ!蘭ちゃん」
晃くん、煽るな。
「蘭ちゃんよろしくね!」
慶まで何てことを。
溜め息が出た。
本気で。
「あたしたちが太志に近づいたのは、あくまで明日香さんに対して本気かどうか調べるためでしょ?」
あたしの言葉にハッとしたように、3人は視線を落とした。
“目的は太志の気持ちを探ること”
宗教のようにこの言葉を繰り返し言わせたあと、あたしたちは解散した。
家に帰り、ベッドに入りぼんやりと今日のことを思い出す。
汗で濡れたもみあげや、明日香さんに向けた無垢な太志の笑顔。
いつまでたっても頭の中から消えてくれなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!