嫉妬心

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部屋に入るなり布団を頭まですっぽり被り、ベッドに潜り込む慶。 おいおい。 あたしの存在を忘れるな。 仕方ないのでベッドに寄りかかり、床に座った。 「明日香さん、幸せそうだね」 思ったことを口にしてみる。 今日、明日香さんを見て感じたことだ。 以前から誰もが認める程美しかった明日香さんが、さらに輝きを増している。 それはやはり、恋をしているからだと思う。 慶の返事はない。 「太志、いい奴そうだね」 これも思ったことだ。 きっと慶もそう思っているはず。 だけど認めたくないんだと思う。 慶は本当に明日香さんのことが大切なんだろうなぁ。 何だかちょっぴり嫉妬しちゃうよ。 本棚の上に、写真たてが2つ置かれている。 ひとつはあたしと一緒にネズミーランドに行ったときのもの。 もうひとつは、 明日香さんが成人式の時に、慶と並んで撮ったものだった。 慶にとって、あたしも明日香さんも大切なんだろうね。 小さく丸まる慶の背中を、そっと抱き締めた。 温かい、慶の匂いがした。 .
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