素敵姉弟

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蘭は積極的に太志に質問をしていた。 「彼女いるんですかぁ?」とか、「うまくいってるんですかぁ?」とか。 あたしたちの場所からじゃ太志の表情はまったく見えないけれど、 「彼女いるよ。すごく幸せ」と弾んだ声が聞こえた。 もう、じゅうぶんだよね。 太志の気持ちが伝わってくる。 「ねえ、慶……」 やめようよ。 そう言いたかった。 だけど、慶の切ない顔を目の当たりにすると言いだせなくなる。 しばらくして一段落したのか、蘭がペンを置いた。 「あのぉ、一目惚れしちゃったんですぅ。あたし、どうしたらいいですか?」 上目遣いで太志に迫る蘭。 世間一般の健康的な男子なら、間違いなく落ちるね。 だけど太志は、違った。 「さっきも言ったけど、僕には彼女がいるんだ。彼女のことすごく大切だから、君の気持ちには答えられないよ。ごめんね」 蘭の告白をキッパリと拒否した太志。 慶。 もうわかってるよね? 遊びなんかで人と付き合う人じゃない。 明日香さんのこと、本当に大切に思ってくれてるよね。 慶は新聞を折り畳み、スッと立ち上がった。 .
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