第一幕 紅傘の斎京

2/10
前へ
/167ページ
次へ
青白い月が空で光る夜。 初夏の爽やかな風が屋敷と民家の間を通り抜けていく。 今、俺は大きな屋敷の塀の前にいる。 依頼を受けたんだ。殺しの依頼を。 依頼主はこの小さな小さな国の領主の家臣。 内容は領主の暗殺。 どうやら後釜狙いらしい。 まぁ俺にとっちゃあそんな事どうでも良い。 興味も無い。 金は先払いで貰った。 後から払わないなんて言われたら殺すしかないからな。 で、此処がその可哀想な領主の屋敷前。 まぁ、俺が可哀想って言う義理もねぇが。 辺りに巡回の武士はいない。 さっさと仕事を終わらすか。 「よっと」 塀に手を掛け飛び上がり、塀を越える。 こんなもん俺にとっちゃ無いのと変わらない。 降り立った場所は庭園の草の上。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加