闇の中の少女

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屋上から跳んで降りる。 するとグラウンドのスタンドの方から人の気配がした。 今はまだ時間が止まっているハズだから、動けるとしたら能力者だ。 急いで言ってみると思った通り闇の中でスタンドに立つ人影があった。 暗闇でよく見えないけど見覚えのある綺麗で長い髪が目に入る。 間違えなく女子だ。 「ヒカリ?」 同じスタンドに立ったが、まだなんとなく距離を取ったまま声を掛ける。 月を隠していた雲が動き出した。 そいつがこっちを向いたと同時に月明かりが俺達を照らした。 俺と同じ学校の制服で見覚えのある綺麗で長い髪…。 だけどそいつの髪の色は光の反射も許さないような深い黒だった。 ヒカリと正反対な雰囲気だ。 「…意外と鋭いじゃない」 「へ?」 何が? …って、間違った事謝らないと…。 「あ…ごめん。間違えちまって」 その言葉を聞いた後に、ふぅと溜め息をつかれた。 「…私はヤミ」 「ヤミ?それがお前の名前か?」 聞き返すと同時に風が吹いた。 その風が思ったよりも強かったので腕で目を隠す。 風が止んで目を開けるとヤミはいなかった。 「あれ?どこ行って…て、ヒカリだ!!」 そうだよ! ヒカリを捜さないと! 確か春波と帰ったんだよな? 急いで春波の家へと走る。 到着して息を切らしながらインターホンを押した。 さっき月が出たから時間はもう動いているハズだ。 「はーい」 その後すぐに春波は出て来てくれた。 「よ…よう」 膝に手を付いて顔だけ向ける。 「どうしたのよ?そんなに息を切らして」 「いや、ちょっと春波に聞きたい事があって…」 「ふーん、なに?」 「ヒ、ヒカリ来てねーか?」 息がし辛い。 「ヒカリちゃん?来てないけど…」 「そ…そうか」 春波の所に居なかった。 だとすると最後の望みは自宅だ。 よし、行くか! 「ヒカリちゃんと何かあったの?喧嘩?もし喧嘩ならね、そーゆー時は男が悪いってジュラ紀から決まってるの。でもあたしは心の広さが宇宙並みだからアンタの話しぐらい聞いてあげても…って、あれ?タクト?」
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