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「ぜぇ…ぜぇ…」
もう息をしているのかわからないくらいだ。
そんな状態で自分の家のドアノブを回した。
「鍵…開いてる」
急いで中に入る。
「ヒカリ!!」
「あ、おかえりなさい。タクト君」
「あ…」
い…た。
「良かったー…」
安堵と共にその場に倒れてしまった。
「ええ!?どうしたんですか?タクト君!?」
調理中のエプロン姿でヒカリが駆けつけてくれた。
「はは…大丈夫大丈夫…お前が無事なら」
目がぼやけるな。
足も震えてるし。
能力者じゃなくなったのか。
「待ってて下さい!今治します!」
「いいよ、ヒカリ。ただ走り回って疲れているだけだから」
手を向けて能力を使おうとするヒカリを制す。
少し経って落ち着いて、蒼麻にヒカリの安否をケータイで伝えてからリビングで今日起こった事を話した。
「それでな、イノネウスはヒカリの回収に失敗したって言ったんだよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。そっちは何か無かったのか?」
「ええ…。実は私、加賀美さんと途中まで一緒に帰って来てすぐに寝ちゃったんですよ。調理を始めたのもタクト君が帰って来るちょっと前でして…」
「そうか…」
ヒカリの所にはイノネウスは来なかった。
いや、来ていたが誰かが追っ払った?
もしそうだとしたらそれは誰か…。
ヒカリをイノネウスから逃がした人物と関係があるのだろうか?
もしかして本人?
だー、わかんねえ…。
「あの…タクト君?」
「え?ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事してた」
そういえば、あの事ヒカリに話してわかるのかな?
「あのさ、ヒカリ。今日戦っている時に…」
俺は一瞬だけ不思議な空間に行った事を話した。
「その声がしてから、武器が出せるようになった。そういう事ですか?」
「ああ。ヒカリなら何か知ってるかなって」
記憶喪失の人間に聞くのもどうかと思うけど。
「う~ん…」
それでも一生懸命考えてくれているヒカリ。
ありがとう。
「すみません…私にはわかりそうにないです」
「いいっていいって!いずれわかる時が来るさ」
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