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夢を見た。
光の塊みたいな女の人が話しかけてくる。
『力が欲しいですか?』
俺は逆に訊いた。
「どんな力だ?」
『大切な人を-もしくは物を護る力です』
大切な人か…。
そりゃ俺もいつかは結婚したりするんだろうから、そういう力は持っていて損にはならないか。
などと思い、
「そういう力なら欲しい」
と応えた。
すると、その女の人が微笑んだ…様に見えた。
『あなたなら…そう言ってくれると信じてました』
なんだ?
前から俺の事を知ってるような口振りだな。
『それでは、あなたに力を-』
そう言って女の人が俺に向かって手を差し伸べた所で目が覚めた。
「うあ?」
ピリリリリ
ベッドから手を伸ばし、目覚まし時計を止める。
時刻は午前7時30分。
「う…あ~…」
俺は五階建てのマンションの三階のワンルームで気だるく目を覚まし、眼鏡を掛け洗面所へと向かった。
このボケーッとした顔で立っているのは俺、火野 タクト(ひの たくと)。
「…今日もか…」
俺は右手で少し長めのボサボサ頭を貪った。
「…今日も…赤い…」
実を隠そう、俺の髪の毛は赤い。
しかしこれが何故か俺以外の人には黒く見えるらしい。
何でだ?
俺がおかしいのか?
俺は台所に行き、朝食の食パンを焼いている間に制服に着替えた。
テレビをつけても、面白いモンはやっていない。
チンッ
お、パン焼けたな。
俺はトースターから食パンを、冷蔵庫から牛乳とバターを取り出しテーブルの前に腰を下ろした。
あとはこれ食べて、顔洗って、歯を磨くだけだな。
その間に自己紹介でも…。
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