炎の中の少年、霧の中の少女

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俺は昨日このマンションに引っ越して来た高校一年生…んん、高校二年生だ。 今日から学年も変わり新学期が始まる。 両親はいない。 今まで爺ちゃんと婆ちゃんの家に妹と住んでたんだけど、俺の勝手な考えで一人暮らしをさせて貰える事になった。 普通は反対するんだろうけど、俺には賛成を貰えたベンリグッズがあったんだ。 それはまたの機会に。 高校はと言うと、結構高い所にある。 前まで一時間掛けて電車通学していたんだけど、このマンションからなら走って行けそうだ。 何故こんな言い方をするのかというと、実は高校への道のりを知らねえんだ。 昨日は忙しかったからな。 でも、昨日部屋の前から高校が見えたから、どの方角にあるか、走って行ける距離か位は大体わかる。 「よっしょ」 俺は全ての準備を済ませ、鞄を持ち、玄関の扉を開けた。 「行って来まー…って、なんだこりゃ!?」 近くの部屋の皆さん、朝っぱらから大声出してすみません。 でも皆さんもこれを見たら驚くはずです。 目の前に十メートル先も見えない霧が広がってます。 「あーあ…」 俺は扉の前で腕時計を見た。 時刻は午前8時00分。 8時40分から朝のHRが始まるから…40分もあればなんとかなるだろ。 「そうさ!なんとかなるさ!!」 と、自分に言い聞かせると十メートル先も見えない霧の中を歩き出した。 「ヤバい…道がわからない…」 出発して十数分…俺は案の定道に迷っていた。 昨日、高校までの道のりを確認しとけば良かった。 「このままじゃ新学期早々遅刻する…。ん?」 道に迷いパニック状態の俺に人の影が見えた。 よし、あの人に聞こう!! 近付くと段々と人影の正体が見えてくる。 お、ラッキー!!うちの高校の制服じゃん。 その人影は、俺と同じ高校の制服を着た少女の後ろ姿だった。 髪長えな…。 腰まである。 「すみませー…」 サアァァァ… 俺が声を掛けようとした時、風が吹いた。
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