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-のにも関わらず霧は全然晴れなくて-。
それなのに…何故見える?
風に吹かれてなびいた目の前の少女の髪が、白く、長く、そして美しい。
老けて髪の毛が白くなるのとはワケが違う。
白の中に微かに桃色も混じっているその色からは、今の時期が春という事から心なしか桜を連想させた。
日本の女を代表する黒をそのまま白くした感じ…。
髪の毛って光るんだ…。
「あ…」
その輝かしい姿を見て言葉を失った。
…っと、いけね…道聞くんだった。
「すみません」
声を掛け、近寄ると、
「…?」
その少女は無言で振り向いた。
う…わ…。
俺はまたもや言葉を失った。
髪をなびかせながら振り向いたその少女は、世界一可愛いんじゃないかと思わせる程の美少女だったからだ。
「…」
その優しい顔の少女が虚ろな目で見つめてくれたお陰で、俺はまた我に返る事が出来た。
「あ、あの!」
なんか緊張して大声出しちまった。
「雛ノ禽(ひなのとり)高校の生徒ですよね?」
「…」
少女は虚ろな目で俺を見続ける。
お願いだ、なんか喋ってくれ…。
「良かったら、一緒に行きませんか?や、いえ、朝っぱらからナンパなどではなく!昨日引っ越して来たばかりな上に、この霧のせいでホントに道のりがわからないんです!!どうか助けると思ってー…」
言い訳を並べているかの様に長々と喋っていると、
「って…え!?」
その少女はフラつき、横に倒れそうになった。
「危ね!!」
-のをギリギリ受け止める事が出来た。
「どうしたんですか!?大丈夫ですか!?」
俺が話しかけても少女はぐったりしていて目も開けない。
どうする?
病院か?
でもこの霧じゃ、どこに何があるかなんてわかったもんじゃねえ…。
霧が無くてもここら辺の事は全然わからねぇし…。
仕方ねえ、俺の部屋に…。
俺が少女をお姫様抱っこで持ち上げようとする。
と、その少女の体重は羽みたいに軽かった。
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