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「ルートさん。どうか『希望の卵』だけは守っていただきたい」
「はい、この私にお任せください」
ルートは右腕に着けた時計を見る。時計の針が指し示す時間は11時55分。自分の初任給で買い、それ以来ずっと使ってきたこの時計には思い入れがあった。
自分のお守りでもある時計をそっと撫でる。銀色が光に反射した。
「さあ、後5分です。私も少し働くとしましょう」
レフォールが指定した時間は深夜0時きっかり。今時犯行予告など流行らないだろうが、レフォールは二度盗みを成功させている。ご丁寧にも、警察に予告状を送り届けて、だ。
いずれも奇知に飛んだ策を使い、華麗に物品を盗んでいった。
今回はフランス警察局の名に懸けてレフォールの面々を捕まえなければならない。三度もの失態は防がなくては――使命感がルートの中で燃えたぎる。
立ち上がろうとすると体が震えていることに気付く。微笑を浮かべたルートは颯爽と部屋を出た。
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