日常の世界、平凡な世界

3/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
 ただそれ以上に、唐突なまでに突飛で突拍子もない質問には、訝しげな表情以外作れない。  俺は少しばかりの好奇心に縛られることもなく、走り去ろうと振り返る。  構ってられるか、こんな人。  が、走ることは叶わなかった。身体が思い通りに動かない。  どれだけ脳から命令を送っても、身体は全く従わない。  どうなってんだよ!? 動け、動けよ! おい!  必死に命じても全く言うことをきかない。  混乱は加速する。パニックから抜け出す為、助けを求めようと叫ぶ。 「────」  浅はかだった。身体が言うことをきかないくせに、身体の一部の口が、喉が、声帯が自由に使える訳がない。  しかし何故か口は開き、喉が震えた。叫ぶ程大きくではなく話す程度だが。  しかしその代償としてか、数秒音が遮断された。烏の鳴き声も、遠くに聞こえていた車のエンジン音も全て。  それでももう一度試みる。……ぴくりとも動きやしない。  そして、まるでパントマイムのように、生命活動以外全てが動かなくなった。  呼吸、拍動、思考。以下停止──
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!