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水江は面倒ながらも、月生学園のオープンキャンパスに行く道中だった。
申し込んだのが遅かったせいで、体験入部できるのがハンドベルしか無かった。
ハンドベルが嫌な訳ではなかったが、クリスマス会であるような、「チリンチリン」と鳴らすおもちゃに近い物を想像していたので、楽しみな気持ちは全くなかった。
母親が月生学園のオープンキャンパスに行くことを急に決めたので、あまり乗り気ではなかったのも、そのような気持ちを起こさせる一つの要因である。
夏の暑さに、やられかけていてテンションが上がらないのもあるだろう。
水江は、四字熟語の単語カードを見ていたが、電車の揺れのお陰で睡魔を覚えてきた。
熟睡仕掛けたとき、隣にいた母親が叩き起こした。
「亮!白金町に着いたわよ!」
外は、蝉が駅の発車ベルのように、ビルの非常ベルのように、うるさく鳴いていた。耳をふさぎたくなるような音に、顔をしかめながらも目覚まし代わりになったようで、直ぐに目は覚めた。
白金町駅からは、15分ほど歩く。敷地に入るまでは坂道や階段が続き、せっかく電車の冷房で乾いた汗が、もう吹き出ている。学校の敷地に入っても、まだ階段は続いた。
絶対にこの学校には入学しまいと、この時は思った。が、しかし翌年の2月には第一志望校として受験し、第1日程で合格してしまうのだから、このオープンキャンパスですべてが変わったと言っても良いだろう。
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