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「ホント、先輩って何考えてるんですか」
隣に向けて話しかけても、返事はない。
--そうか、本当にひとりなんだ
改めてその事実を確認すると、なんだか悲しくなった。
--なんで、こんな気持ちになるの?
そんなの、決まってる。
--なんで、会えないのがこんなに辛いんだろう。
そんなの、分かってる。
「…私、折原先輩が好きだったんだ……」
私が静かに呟く言葉に答えたのは、吹き抜ける風でも、伸びをする猫の声でもない。
「やっと、聞けた。」
頭を撫でる温もりと、優しさを詰めこんだような声。
「…先、輩……?」
「ごめんね、ずっと近くにいたんだけどさ。たまには、離れてみようと思って。」
困ったように笑いながら、私の頭に乗せていた手でそっと頬に触れた。
「もう離れたりしないよ。だから」
先輩が親指で私の目元を拭うと、きらきらと光る雫が先輩の指につく。
「もう泣くな。」
その言葉を聞くと、スイッチが入ったように次々と私の視界が濡れて、歪んで、こぼれ落ちていった。
(嬉しくて泣くなんて、きっと初めてのことだから。)
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