78人が本棚に入れています
本棚に追加
[きっかけ、約束]
私が苦手な物は、二つある。
ひとつは、早起き。
そして、もうひとつは--
朝、いつも通り学校に向かおうと玄関の戸を開けると、私を待つ人影がひとつ。
「やあ、おはよう。今日はいつもより早いね。」
爽やかな笑みを浮かべるこの綺麗な顔の人-折原先輩は、なぜだか初めて会った日の翌日からこうして毎朝、頼みもしないのに迎えにきてくれるのだった。
そして、何を隠そうこの人こそが、私のもうひとつの『苦手なもの』である。
「……先輩、迎えはいいって言ってるじゃないですか…」
私は心底うんざりする気持ちを隠すことなく、言葉として吐き出す。
「そんな風に遠慮するなんて、殊勝だなぁ。気にしないでいい、俺が好きでやってるんだから。」
「……そうですか…」
はあ、とため息をついた。
どうやら、この人の耳には特殊なフィルターがついているようだ。
よく言えば、ポジティブなのである。
「じゃあ、行こうか。」
「はい…そうですね。」
私は反論するのを諦めて、歩きだす先輩の後に続いて歩き始めた。
-ここまでは全ていつも通りの流れだったのだが…
私が先輩を追って家の敷地を出た途端に、いつもとは違うことが起きた。
最初のコメントを投稿しよう!