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「やっぱり、君の手は温かいんだね。」
「え、は、な、何…っ!?」
私の右手に重なる、冷たくて大きな手。
それは、紛れもなく先輩の左手だった。
「こんなことで赤くなってたら、この先もたないかもよ?たとえば、セッ…」
「それ、セクハラ発言ととってもいいですか?」
私は先輩に最後まで言わせまいと、素早く答える。
「あはは、やだなぁ。スキンシップと言ってよ。」
「とにかく、離してください。」
「だーめ。離したら、離れちゃうだろ。」
何を当たり前のことを。
とツッコもうとするが、それは叶わなかった。
急に、先輩が繋いだ手を自分の口もとにもって行って、唇で私の手の甲に触れたからだ。
「んな…っ!!?な、な、な、何……っ!!?」
パニック、混乱、大混乱。
突然のことに、頭が追いつかない。
「約束の印だよ」
「何のですか!?」
軽く睨みつけるように言うが、先輩があまりに真剣な顔をするので、気が削がれてしまった。
「……また、迎えにくるから。明日も、一緒に登校しよう。」
どこか焦躁を帯びたような、はたまた、縋るような、そんな声。
そして私はこの時不覚にも、そんな先輩に囚われてしまったのだった。
(なんでこんなにドキドキするの?)
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