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緊張してる…
今日から五番隊の席官としてやっていくんだ…。
――――――
「まず、執務室に行って、それから…」
小声で呟きながら歩く。
歩き方がおかしくなる。
席官入りが決まってからずっとこう。
…あっという間に執務室。
緊張している時ほど、時が速く感じてしまう。
「失礼します!」
声が裏返る。
戸を開くとそこには、二人の男性があたしを唖然(あぜん)として見ていた。
大きな机には、金髪の隊長。
その机の前では、副隊長が書類の束を抱えて立っていた。
「あの…平子隊長と、藍染副隊長はここで執務をしているとお聞きしたのですが、こちらであっていましゅですか…?」
かっ…噛んじゃったぁ!!!!!
【いましゅ】って!!
しかも、【ですか】まで!!
自分の言葉が、ぐるぐるぐるぐる回って、頭が白くなってきた…
『……席。玖零三席。』
「…へ?あ!はい!!」
藍染副隊長(藍染惣右介副隊長)に呼ばれ、やっと還ってきた。
平子隊長(平子真子隊長)は、肩を震わせ、怒りをこらえてい…『ブフゥーーーッ!!!!』
怒りではなく、笑いをこらえていたようだ。
机をバンバン叩きながら笑う平子隊長を、藍染副隊長は叱った。
『平子隊長、新人隊士ですよ?そんなに笑っては…』
『【いましゅですか】て!!噛んどるし…日本語的に間違うとるやろ!!』
全指摘。
あぁ…穴があったら、本当に入りたい。
こういう時に使うのか…
恥ずかしすぎる。
『平子隊長!』
『あ?なんや…。!』
『笑いすぎです。…大丈夫かい?玖零三席。』
「え…」
気づかなかった…あたし、泣いてたの?
気づかなかった事に一番驚いた。
あたしは、死覇装(しはくしょう)の袖で、涙を拭い、無理に笑った。
「すいません…。ま、また出直します!!」
深く一礼し、執務室を後にする。
『平子隊長、後でちゃんと謝って下さいよ?』
『…。』
『相手は、女の子なんですからね?』
『わーかっとるわ!今考えとんねん!…何て謝るか…。』
――――――
五番隊は、あたしの憧れだった。
【だった】んじゃない。
【今】も…。
昔、南流魂街(みなみるこんがい)78地区“戌吊”(イヌヅリ)であたしを助けてくれた…長い金髪…白い羽織…〈五〉の数字。
虚に喰われて死ぬ筈だったあたしを、助けてくれた。
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