‡入隊‡

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あたしが覚えていたのはそれだけ。 小さかったあたしは、お腹もすいて、血を目の前で見たということもあり、気絶したらしい。 …気付くと、あたしは、木にもたれかかり寝ていた。 虚は? 金髪の男の人は? フ…と、右を見ると、大きなおにぎりと、大人サイズの竹筒(水入れ)が手紙と一緒に置いてあった。 手紙の内容は、【腐らんウチに食いや。】 それだけ。 あたしは、食べていいと分かると、おにぎりを口いっぱいに頬張った。 竹筒の中には、水でなく、甘いお茶(多分、玉露)が入っていた。 無くならないように、大事に食べたけど、おにぎりはすぐ無くなった。 お茶は半分以上はあるはず。 まあ、そのお茶も、次の日にはなくなったけど。 ―――――― 「…て、何を思い出して…」 トントントン… 「は、はい!!どちら様…」 『平子やけど…玖零…さっきは…その…スマンやった…。』 「平子隊長…?」 障子の向こうで謝る平子隊長。 時折、頭を抑えるような仕草をするのが見える。 『…やから…玖零…』 ススス… 障子を開け、顔を覗かせる。 『!!!』 「大丈夫ですよ。泣いたのは…、緊張、そう!緊張してたからですよ!!」 『ホンマか…?』 「はい。お気になさらずに!」 明るく答える。 声は上擦り、緊張していた。 命の恩人を目の前にしているから。 『そうか…?んじゃ、お詫びのしるしに、今夜呑まへんか?』 「え?呑むって…あたしお酒ダメですよ…」 『ええやん?女はそん位が丁度ええわ。可愛ええやん。』 「可愛…!?」 『んじゃ、今夜の八時キッカリに俺の部屋なァ~!絶対お・い・で♪』 「え!?ちょっと!平子隊長…!?」 呑むって言うくらいだから何人か居るのかな…? ―――――― ~~夜~~ ―――――― 静まり返った平子隊長の自室前。 「(遅かったかな…静かすぎるよ…。)」 すると、背後から、声がした。 『何しとんねん、玖零。はよ入り?』 「キャアァ!?ひひひ…平子隊長っ…!!」 『はぁい、一名さんごあんな~い♪』 スッと、障子を開ける。 ガランとした自室。 机と、灯り、肘置き(ひじおき)、畳んだ布団が置いてあるだけだった。 『どや?キレーにしてあるやろ?俺みたいやな~。』 腕を組み、うなずく。 「そうですね!」 『…ツッこめや!俺だけちょい寒やんけ!』 「はい…?」
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