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噂をすれば何とやら…声の主は鶴成お坊ちゃまでした。
「おい、要助。下男のくせに挨拶も無しか。」
侮蔑や卑下の含まれたやらしいその声に一瞬体がカーッと熱くなるように感じました。
が、そのわからない感情を抑え僕は答えました。
「失礼いたしました、お坊ちゃま。このような時間にどうなさられたのですか?」
ふん、というように鼻で笑うと鶴成お坊ちゃまは、
「百合子に会いに来た。邪魔だ、どけよ。」
何だか嫌な感じがする。
「このような時間にですか?」
そう僕がたずねると、
「ああ、可愛い可愛い妹に会いに来るのに時間や理由がいるのかぁ?」
間延びし先ほどの何倍も何倍も嫌らしい声でした。
そして僕は先ほどの何倍も何倍も体が熱くなるのを感じました。
あなたは知っていますか?
実の兄が恐ろしくて夜、扉に何重にも何重にも鍵をかけて眠れぬ恐ろしい夜を過ごしている哀れで悲しいお嬢様のことを。
無意識ににらんでしまう…いけないっ。
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