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旋律が聞こえる。
俺を天国へと連れ出す、天使の奏でる旋律が。
「俺は俺のために生きているよ。
だけど、君にそれを否定する権利があるだなんて言えるかい?」
夜の帳が降りた、池袋という名の、欲望渦巻く魔窟の中心に立って、俺は尋ねた。
「あぁ?てめぇ、何言ってやがる」
俺との間の数十mの距離を保ったまま、彼--シズちゃんは低い声で返す。
「シズちゃん、君だって本当は分かっているだろう?
所詮は、誰かのためになんて生きていけるはずもない。」
「………お前の言っていることの意味なんて誰が分かるかよ…」
シズちゃんの額には数多の青筋が浮かんでおり、限界であることがうかがえた。
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