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裕行には出演の際、絶対にしないと決めていることがある。
それはつまり浮気と取れる行為全てであり、キスシーンやベッドシーンなどはどれほど出演料を積まれても絶対に首を縦には振らなかった。
と、言うのも彼には他者も認めるほどに溺愛をしている、妻の奈津がいるからである。
いくら演技であり浮気ではないとしても、奈津を悲しませるであろう演技はしない。
これは裕行が16歳にデビューしてから約20年間、ずっと貫き通してきたモットーだ。
だがそんなこともあってか、彼の誠実さと一途な性格は本人の意志とは無関係に女性ファンを集め、毎年結婚したい有名人ランキングの上位をキープしている。
裕行 「…毎回悪いな。一応事務所に依頼が来た時点で確認はして貰ってんだけどな……」
そう言って困ったように笑う彼に、鈴も苦笑してみせる。
鈴 「いえ、たいしたことないですよ。それに、ある意味僕の誇りでもありますから。」
裕行 「誇り……?」
鈴 「この業界では自分の意志を貫き通すなんてなかなか出来ないことですから……。だから颯真さんはスゴいんですよ。それでこそ貴方の担当のしがいがあるってもんですよ」
鈴 「……リン…」
裕行 「……お前、……コッチの趣味か…?」
鈴 「違います」
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