純白の姫

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……青年の目は既に光を失っていた。 青年の口元からは血が溢れに溢れ、必要不可欠ともいえる呼吸器官は‐食い尽くされた‐かの様に抉り取られている。 フィルスが打撃を加えた右側の肺を中心に、貫通するように空いた空白…。 青年の身体は彼が望むわけでもなく空白を埋めようと臓器を移動させた。 人間の体内は……窮屈だ。 狭苦しい空間に出来た空白は直ぐ様群がるように、蛆の如く空席を奪い合う。 フィルスはその光景を静観していた。 「……いつ見ても醜いな、人間の体内は。 まあ、魔法使い限定だが」 微かに聞こえる浅い呼吸音と体内変異により生じる生々しい水音。 それらを繊細な聴覚で聞き取りながらフィルスは手についた血と肉片を払い除け、右足で青年の頭部を軽く踏みつける。 「……俺をそんな目で見るな。 侮辱された気がしてお前を殺しそうだ。 今や屠所の羊に成り果てたお前は大地の匂いを嗅ぎながら死を待てばいい」 漆黒のブーツを履いているフィルスは踏みつける力を徐々に強くしていく。 顔面を正面から地面に押し付けられ、抵抗する術もなく苦悶の声をあげる‐風帝‐。
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