純白の姫

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本来の人間ならば、肺に微小の風穴が空いただけでも処置をしなければ呼吸困難に陥る可能性が高い………本来の人間ならば。 ……だが‐奏者‐は例外だ。 フィルスは奏者の事を‐魔法使い‐と呼んではいるが、一般的には‐奏者‐で流通している。 魔法を使う者の事を‐魔法使い‐と呼ばないのは、ただ‐異端‐に嫌悪があるから。 ……認めたくないのだ。 自分達が異端者だという事を。 この世界の中でその名を正当化したとしても、全世界から見れば異端でしかない。 先人は世界的に異端に分類される事を恐れ、逃れようと名称を‐奏者‐にしたのだ。 今現在、全世界から異端として隔離されているが…。 「呼吸が儘ならない状態での酸素の供給。無意識に風属性を利用して行うという事は………‐生‐に強い執着心があるのか?」 「………。………ぁ……………ぅ……」 「魔法使い……いや、‐奏者‐か。 酸素の供給を、肺に微量の負担しかかけずに行う特別な呼吸法。 ……それが出来てこそ一人前の奏者だが、今のお前は半人前以下だな。 魔法に依存し過ぎな上に、常人以下の呼吸をしている」 奏者には魔法がある。 特別な呼吸法がある。 ―――だから簡単には死なない。
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