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言い換えれば、簡単には死なないだけ。
真の強者を前に成す術もなく倒された時さえ、長時間苦しみながら死ぬしかない。
フィルスが放つ大爆布の水圧ような覇気を全身に浴びせられ、手先は震え呼吸さえも儘ならない状態で、尚も抵抗するという選択肢は既にないのだ。
……ただ、敵の成すがままに。
「………ア…リ………ァ………」
小さく、そして掠れた、誰かに向けた声。
時間が経つにつれて徐々に強さを増していく踏みつけの力の中、鼻は既に潰れ、血の水溜まりが出来ている。
鼻からの出血と口からの吐血。
このまま放置しておけば窒息死か溺死は確実だ。
両方とも死因は自らの血によるものだからフィルスは殺人として罰せられない。
致命傷に至るまでの傷は、正当防衛とすれば罪は格段に軽くなる。
だからこそあの時に‐わざと‐攻撃を受けた。
フィルスが残像と一体化するまでに放たれた“不可視の魔弾”を急所を掠める様に貫通させたのだ。
……さすがにフィルスも苦痛で舌打ちをしてしまったが。
「……くそっ、お前が時間をかけさせたお陰で陽が完全に昇った。
昨日から空腹を満たしてない上に、眠い。……そして何より、ヤりたくて堪らない」
……今のフィルスの機嫌は悪い。
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