魔法の森の精霊使い

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数多の幻想が集う場所、幻想郷。 その一角に存在する魔法の森。 そこにある少年が居を構えている。 両親を早くに亡くし、魔法の森に住んでいた祖母に引き取られた少年だったが、その祖母も亡くなってしまった。 結果、少年は一人魔法の森に住む事になったのだ。 「眠い……だけど空腹には勝てないな」 朝、といっても最早昼時だが、目を覚ましたボサボサの黒髪を生やした少年は何時も寝ているリビングのソファーから立ち上がると、キッチンへ向かった。 黒い瞳を擦ると、はだけた寝間着を脱ぎ、何時も着ている幾何学模様の刺繍が施された濃紺の着物を羽織り、濃紺のズボンに足を通した。 さて、朝食を作ろうにも幻想郷に電気はない、ポットでお湯を湧かしたり、トースターでパンを焼く事などは出来ないのだ。 ならばどうするか。 「鍋に水入れて、リプカ、火ぃ頼む」 「はぁい」 神夜の周りを赤い光が回ったかと思うと、その光が赤いワンピースを着た少女に姿を変えた。 その少女が人差し指を鍋のかけられた釜に向ける。 すると釜に火が付き鍋を熱し始めた。 少年は生前の祖母に魔法使いとして修行を受けていた。 魔法使いにもいくつか種類がある。 そんな中でも少年は精霊使いと言われる部類に位置していた。 「どうせあいつも来るだろうし、神無、俺と神無の皿ともう1人分出しといてくれ」 少年の言葉に絨毯の上で丸くなっている尻尾を2つ持つ黒猫が「にゃあ」と、鳴いた。 だが、猫に皿の用意など出来る筈もない。 しかしここは幻想郷という世界。 二尾の猫はその姿を人間の洋服を着た、腰まである黒い長髪、金の瞳を持つ少女の姿に変えると、皿の用意を始めた。 猫又と呼ばれる妖怪だ。 少年は弱っていたこの妖怪を拾い、使い魔として契約したのだ。
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