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「今日からここがお前の家だよ、和音」
1849年春。
近藤周助は、ただ黙って自分を見上げる幼女に言った。
「おじさん、和音のおうちはここじゃないよ」
幼女は近藤家を指差し、周助の言葉を否定する。
「いいや、ここなんだ。それからおじさんのことは"父上"って呼んでくれ」
「どうして?」
大きな目をパチパチと瞬かせ、幼子独特の丸い顔をこてんと傾げる。
周助は少し寂しそうに笑い、和音を抱き上げた。
「ごめんなぁ。和音はこの家の子になったんだ」
「ふぅん」
特に興味も無さそうに、和音は近藤家を見つめていた。
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