華燭之典

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そうして辿り着いた道場。 ここではよく稽古や試合をした。 一際強い風が吹き、和音の前髪を揺らした。その風が思い出させた過去に和音は胸がいっぱいになる。 「総ちゃんに剣を教えたのは私だったよね」 「そうですね。あの頃はまだ竹刀や木刀が重くて」 沖田も綺麗な過去へ思いを馳せ、そっと和音に近寄った。 「本当にありがとうございます。私に剣を教えてくれて……私を、好きになってくれて」 沖田の言葉に和音は照れくさそうに自身の髪を撫でて少し俯く。 「…総ちゃんは初めて会った時から好きだったよ」
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