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沖田は眉根を寄せて声がした方を見た。
声の主である義兄の沖田林太郎は素知らぬ顔で徳利を振っている。
「総ちゃんの端唄聴かせてよ」
和音が慌てて沖田の得意な分野を上げると、沖田は頷いて一呼吸置いてから唄い始めた。
「春は花 いざ見にごんせ 東山」
これは京の四季という唄で、少し前に京で流行っていたものだ。
集まった者達は皆沖田の歌声に感動して酒を飲むことを忘れている。
「…ヨイヤサー」
唄が終わるとたちまち拍手喝采の嵐だ。
林太郎もにんまり笑いながら手を叩いていた。
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