どうして生まれたか

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「あ、ユキナぁ、おかえりぃー」 幼い女のコが駆けてくる この子はサラ。 このプラネットで唯一、 生まれようとしない子。 「ユキナぁ、 もうやめなよ! 人間界なんて汚い事しかないよ」 くるくるとユキナの回りを 走り回るサラは、さながら、 妖精のようだ。 金色の髪を揺らして ユキナの手を自分の頭へ。 「いいじゃない、 私が、ユキナが、みんなが こうして触れてくれるもん おかあさんだけじゃないよ 撫でてくれるのは」 「…それでも私は」 「ユキナ、サラ、いるのか?」 「あ、にいさま! にいさまだよユキナ!」 嬉しそうに にいさま、 両目に包帯をした 青年のところまで サク、サク、と、砂を踏んで近づいてゆく 「ライカ、ライカもまた 行ってきたの? また、帰ってきちゃったの…?」 「ユキナ…そんな悲しい顔をするな 我々は生まれるために ここにいる。 愛情と愛情で、出来上がって こうして何度も生まれようとする」 目を潰された経験のあるライカは 人間界に生まれたら 目がちゃんと機能するかも わからないのに、 毎日、 毎日、 生まれる 『儀式』 をしている。 そう、ここはソウルプラネット 人間が生まれる前に、 住んでいる所。 生まれる、生まれないは 個人の自由。 そして人生を選ぶのも 自由。 ただ、わからないのが 『生まれられるか』 『必要とされているか』 『自ら望んだ命か』 この三つ。 「我は… もう駄目かもしれぬ」 ライカが差し出した手には ビキビキと砂のヒビ 「今踏みしめる仲間達と 一緒になるのも 時間の問題だな もう…チャンスは幾度とない」
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